こんにちは、Power BI サポート チームのクルボノブです。
通常、Power BI レポートのデータは、セマンティック モデルの所有者、またはモデルの更新権限を持つユーザーによって、スケジュール更新またはオンデマンド更新を実行することで最新の状態に保たれます。このようなデータの更新操作は、一部の権限を持つユーザーに限定されており、閲覧者(Viewer)ロールのユーザーはレポートの閲覧のみが許可され、通常は更新を実行することはできません。
しかし、お客様の運用方針や要件はさまざまであり、「閲覧者ロールのユーザーにもデータを更新させたい」といったご要望をいただくことがあります。本記事では、Power Automate ビジュアルとフローを活用し、閲覧者ロールのユーザーがレポートのデータを更新できる方法について紹介します。
重要
本記事で紹介した方法は、お客様からのリクエストに応じた「ワークアラウンド」であり、標準的な運用として推奨されるものではありません。
通常、閲覧者ロールは「レポートの閲覧のみを許可し、それ以外の操作を制限する」ことを目的としています。そのため、閲覧者に対してセマンティックモデルの更新を許可する運用は、組織のポリシーやセキュリティルールに抵触する可能性があり、社内ルールの混乱や意図しないデータ更新が発生するリスクを伴います。
また、容量ベースで運用している場合、更新操作によって容量リソースが消費され、閲覧者による更新が組織全体のリソース利用に影響を与える可能性がある点にもご留意ください。
本方法を採用する場合は、既存の運用ルールや社内ポリシーとの整合性を確認し、セキュリティやリソース管理の観点から問題がないことを関係者間で十分に協議したうえで実施することを推奨します。
前提条件
• Power BI Pro/Premium Per User ライセンス(セマンティックモデルの所有者)
• 更新対象のセマンティック モデルの所有者が設定したレポート
• Power BI Desktop(更新を実行するPower Automate ビジュアルの追加/編集に必要)
手順
1.Power Automate ビジュアルの追加
閲覧者ロールのユーザーにデータを更新させたいレポートの pbix ファイルを Power BI Desktop で開き、Power Automate ビジュアルを追加します

2.Power Automate ビジュアルのフローを編集
追加した Power Automate ビジュアルの右上の「その他のオプション […]」>「編集」をクリックします。

3.フローの作成
フローの編集画面で、以下の手順を実施します。
- 「+新規」>「インスタントクラウドフロー」>「新しいステップ」 を選択します。
- 操作リストで 「Power BI」 を検索し、クリックします。
- 「アクション」タブで「データセットの更新」 を選択します。



4.ワークスペースとセマンティック モデルの設定
次の画面で、pbix ファイルをダウンロードしたワークスペースとセマンティック モデルを指定し、「保存」 をクリックします。

5.更新ボタンの作成と調整
更新フローを実行する以下のボタンが作成されますので、必要に応じて名前の変更やサイズと位置の調整等を行います 。

6.実行ユーザーの設定
ボタン右上の「その他のオプション[…]」>「編集」をクリックし、以下の画面でレポートを更新する閲覧者のアカウントを「実行のみのユーザー」追加します。


7.レポートの再発行と動作確認
設定が完了したら、レポートを同じワークスペースに再発行し、閲覧者のアカウントでアクセスし、Power Automate ビジュアル上でフローを実行して、セマンティックモデルが 更新できることを確認します。
「更新履歴」 にて、Power Automate ビジュアルで実行した更新が 「API 経由」 として表示されます。

注意
1. 共有容量(Power BI Pro)のワークスペースの場合、過度な更新頻度は他のレポートやデータセットのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 共有容量(Power BI Pro)のワークスペースの場合、セマンティックモデルの更新は、スケジュール更新と API 更新を合わせて 1 日最大 8 回までに制限されています。
3. Power Automate 経由で実行された更新は、「API 経由」として記録されます。そのため、どのユーザーが実行したのかを詳細に特定することが難しい場合があります。
4. Premium ワークスペースではより多くの更新処理が可能ですが、過剰な更新はリソースの逼迫や予期せぬパフォーマンス低下を招く可能性があります。
5. Power Automate ビジュアルを使用する場合には、考慮事項や制限事項が適用されます。詳細は以下の公開情報をご参照ください。
おわりに
この記事では、閲覧者権限を持つユーザーがセマンティック モデルを更新できる方法についてご紹介しました。
この方法を活用することで、レポート閲覧者が必要なタイミングでオンデマンドにデータを更新し、常に最新の情報に基づいた分析が可能になります。
Power Automate と Power BI の連携方法については、以下のブログ記事でも詳しく説明していますので、併せて参照してください。
以上、本ブログが少しでも皆様のお役に立てますと幸いでございます。
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