こんにちは、Power BI サポート チームの山崎です。
Power BI をご利用中のお客様から、「ホーム テナントのリージョンを変更したい」 というご相談をいただくことがあります。
多くのケースでは現在のリージョンのままで問題なくご利用いただけますが、法令対応や組織戦略、サービス統合の要件等の特別な事情によってリージョン変更が避けられない場合もあります。
そこで今回は、公式ドキュメントに基づき、リージョン変更の手続きの流れや作業の概要を整理しました。
変更を検討されている方や、今後の判断材料を集めたい方はご参考にしていただければと思います。
ご参考情報: リージョン間の移動
重要
本記事は弊社公式ドキュメントの公開情報を元に構成しておりますが、本記事編集時点と実際の機能に相違がある場合がございます。
最新情報につきましては、参考情報として記載しておりますドキュメントをご確認ください。
Power BI のリージョンはどう決まる?
Power BI のテナントは、Microsoft 365(以前は Office 365 )のテナントを作成した際に指定された国または地域に基づいて、自動的に最も近いデータセンターをホーム リージョンとして割り当てます。
このため、Microsoft 365 のテナントが日本のユーザー様の場合現在は日本に作成されますが、2016 年 12 月以前は東南アジア(シンガポール)に作成されていました。
リージョン変更の概要
Power BI テナントのリージョン変更は、ユーザー自身で行うことはできません。
変更を希望する場合、Microsoft サポートにリクエストを提出し、サポートチームと協力して進める必要があります。
変更プロセスでは、テナントのデータと構成が削除されるため、事前の準備とバックアップが不可欠です。
変更の前提条件
リージョン変更を実施するには、以下の条件を満たす必要があります。
全体管理者ロールの割り当て
変更をリクエストするユーザーには、Microsoft 365 または Microsoft Entra ID で全体管理者ロールが必要です。書面による承認
変更による組織への影響を認識し、同意したことを確認する書面による承認が必要です。(書面はサービスリクエスト起票後、サポートよりお渡しいたします。)連絡先情報の提供
変更期間中の営業時間外に連絡可能な担当者の情報を提供する必要があります。
変更前の準備
変更プロセスでは、テナント内のすべてのデータと構成が削除されますので、事前のバックアップが重要となります。
また、変更のために削除・解除が必要なものもあります。
リージョン変更作業自体は Microsoft にて実施しますが、その前後の準備や再構成等は、すべてユーザー様の責任にて実施いただく必要があります。
※完全な情報は公開情報 リージョン間の移動 を必ずご確認ください。
<リージョン変更準備項目>
(1) 削除・解除しておくもの
- Microsoft Fabric 容量や Power BI Premium 容量を削除
- プライベートリンクを削除
- Azure Log Analytics 接続をデタッチ
(2) 失われるデータへの対応
- Power BI アクティビティログをダウンロード(または Office 365 監査ログを利用)
- 系列ビューの閲覧数を保存
- データ保護メトリックを保存
- 使用状況メトリック(プレビュー)を保存
(3) バックアップ
- テナント全体のバックアップ取得
- スキャナー API で最大限のデータを取得
- Power BI レポートをダウンロード
- セマンティックモデルをバックアップ
- データフローを JSON エクスポート
- 権限設定の記録
- スケジュール更新の設定を記録
- サブスクリプション内容を記録
- ゲートウェイの設定・データソース権限を記録
- PowerApps / Flow / Logic Apps 用ゲートウェイ設定を記録
(4) 再構築のための記録
- すべてのダッシュボードをスクリーンショット保存
- エクスポートできない項目はメモ/スクリーンショット
- Fabric 成果物を Git にバックアップし、外部ストレージ(例: ADLS)に必要なデータをコピー
変更の実施
変更を実施するには、以下の手順を踏んでください。
サポートへのリクエスト
リージョン間の移動 の公開情報をもとに、Power BI 管理ポータルから「新しいサポート リクエスト」を作成し、以下情報をそろえてリージョン変更を依頼します。- テナント オブジェクト ID
- 現在のリージョン
- 提案するリージョン
- 変更希望日時(UTC 時間で 3 つのオプション)
サポートからの連絡
起票後、サポートエンジニアよりお問合せ内容の確認および書面をお渡しのためのご連絡がありますので、ユーザー様にて書面に必要情報を記入後アップロードサイトにアップロードいただきます。変更の実施
Microsoft 側で変更を実施し、完了後、サポート窓口時間帯にサポートエンジニアよりご連絡があります。
<変更後の確認と作業項目>
(1) 初期確認
- サポートチームからリージョン変更完了の連絡を受ける
- 基本動作の確認
(2) テナント & 基盤設定
- テナント設定を確認・更新
- ADLS アカウントを設定(データセットのバックアップ/復元用)
- サービス プリンシパル名 (SPN) プロファイルを作成
- Microsoft Fabric 容量や Power BI Premium 容量を再構築
(3) ワークスペース & ゲートウェイ
- ワークスペースを作成
- ゲートウェイを作成
- データソースを作成(資格情報を手動設定)
- 共有クラウド接続 (SCC) を作成
(4) データ復元 & 再構築
- データフローをインポート/作成
- セマンティックモデルを作成
- .pbix ファイルをアップロード
- インタラクティブレポートを作成
(5) 接続 & 外部連携
- 必要に応じてデータフローストレージを設定
- 必要に応じてログ分析を再接続する
- Azure Log Analytics を再接続
- Git を再接続
- ADLS ストレージを再アタッチ(テナントレベル推奨)
(6) アクセス権 & スケジュール
- 管理者 / 共同作成者を割り当て
- ワークスペース/データセット/レポートごとのアクセス許可を設定
- 更新スケジュールを再設定
よくある質問(Q&A)
Q1. Multi-Geo とリージョン変更の違いは?
A. Multi-Geo は Fabric 容量/ Premium 容量ごとにデータ保存先を分散できる機能です。
一方、リージョン変更はテナント全体のホームリージョンを別の場所に移す手続きです。
Q2. 変更中は Power BI が使えなくなりますか?
A. 変更作業中は、ユーザーは Power BI にアクセスできず、“フクロウ エラーのメッセージ” が表示されます。
Q3. 変更にかかる時間はどのくらいですか?
A. 最大 3 時間のダウン タイムが必要です。
リクエスト起票後から、変更実施までには確認や調整にお時間を要することをご理解くださいますようお願いいたします。
まとめ
Power BI テナントのリージョン変更は、Microsoft サポートと協力して進める必要があります。
余裕を持ったスケジュールと事前の準備、バックアップが不可欠であり、ユーザー様側での変更後の再構成作業も重要です。
以上、本ブログが少しでも皆様のお役に立てますと幸いでございます。
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